If I had six hours to chop down a tree, I’d spend the first four hours sharpening the axe.

~もし、木を切り倒すのに6時間与えられたら、私は最初の4時間を斧を研ぐのに費やすだろう~

危機管理の大切さ 『逃げる力』より

以下の内容から、

危機管理を考えさせられます。

 

東日本大震災の死者の死因の90%以上が

溺死だったそうです。

 

NHK 東日本大震災プロジェクト

『証言記録東日本大震災』に

岩手県陸前高田市消防団

熊谷さんの証言が掲載されている。


熊谷さんは地震発生後、

陸前高田市高田町の西の水門が閉まっているかを

確認します。

その後消防団の屯所に戻る途中のことです。

 

自宅の前を通りかかってパッと見たら

うちのが一人立っていたんですよね、

庭にぽつんと立っていたことだけは

覚えているのね。

 

時間は3時過ぎ。

5分から10分だったと思います。

 

でも俺は車を降りて

「何やっているんだ!早く逃げろ!」

とは言わなかったんだよね。

 

「あ…いるな」と思いながらも

「避難してください」とアナウンスしながら

駅の方角へ海の方に向かって行ったんです。

その時はまだそんな大きな津波が来る

という思いがなかったんだね。

 

その後15時25分頃に大津波が発生します。

熊谷さんは壁のように押し寄せてくる津波を見て

スーパーマーケット「マイヤ」の屋上に

一目散に避難します。

 

高田町が津波に呑まれていく有様を

目の当たりにした後、 熊谷さんは激しく後悔します。

 

家族のことを思い出したのは、

落ち着いて陽に当たりながら

ブルブル震えている時でした。

 

息子たちは小学校と中学校で、下校前だから

多分大丈夫だろうと。

女房のことを最後に見た、

庭でぽつんと立っている姿を思い出して、

だめかもしれないと。

 

間違いなく、なくなるところを

目の当たりに見たわけじゃないですか。

そうなれば家もなくなる、店もなくなる、

これから先はと、ふと思い

うちのさえ生きていれば、

何とかやっていけるんだよなぁと思ったんです。

これからどんなことがあってもね。

あいつさえ生きていればなんとかやっていける。

 

でもダメだったと思いました。

 

なんであの時、消防車を降りて

何で自分の奥さんに、

「逃げろ!なにやっているんだ!

早く山に上がれ!」って

言わなかったんだろうなって思いました。

 

よそのじっじ、ばっばを逃している

場合じゃなかったと。

 

最初に逃がすのは家族だべと。

自分の奥さんだべと。

なんで俺、それをしなかったんだろうと

最後にすぐ横を通り過ぎていたから

翌朝まで後悔、後悔、後悔だね…

 

不安そうにポツンと庭に立っていた姿が

あまりに印象に残っていてね、

今も忘れられません…

 


しかし、一夜明け、

熊谷さんは、かすかな希望を取り戻します。

亡くなったのでは、と思っていた

消防団の分団長に再会したのです。

 

ならば、自分の妻もまだ生きているかもしれないと

瓦礫の山と化した街の中を探しに行きます。

 

方々の避難所を回った末に、

熊谷さんは町のはずれの小さな公民館に

子供と一緒に避難している

妻の和江さんの姿を見つけることができました。

 

見つけた時は、どんな声をかけたかも

何を思ったのかもあまりよく覚えてないよね。

ただ生きてたってそれだけ。

生きていてくれた、というそれだけだったね。

あとは何も覚えていないね。

お互い泣いていたからね。

 

地震発生後 すぐに避難した。

という人は助かりましたが、

犠牲となった人は逃げ遅れてしまった人。

 

大きな理由の一つに挙げられているのは

予測ミスと言われます。


2004年にインドネシアで大地震が起き、

多くの人が津波で命を失いました。

 

その中ほとんど犠牲者が出なかった村が

あったことが話題になりました。

 

その村では、昔から

「海が引けば山に逃げる」

という言い伝えがあったそうです。

 

地震の後、インドネシアでは、

海が急速に引きました。

多くの町や村では、浅瀬に打ち上げられた

魚を捕りに、大勢の人が浜辺に出たことで

被害が大きくなったと言われています。

 

しかし、その村では、

逆に人々が山に逃げ、

津波の被害から逃れることができたのです。


もうひとつの理由は、

多くの人が正常性バイアスの罠に陥った事だ

と言われています。

 

正常性バイアスとは、

災害心理学で使われる用語で

「危険なことに災害遭遇した時、

そんなリスクを危険ではない」

と取られてしまう心理のことです。


自分にとって都合の悪い情報を無視したり、

過小評価したりしてしまいます。

 

危険な状況、日常生活の延長線上の出来事として

捉えて、「多分大丈夫だろう」とか

「なんとかなるだろう」と考えて

逃げ遅れる原因になってしまうのです。

 

よくよく戒めて、命を護らねばと思います。